わたしのイタリア料理レシピは、そのほとんどがもう20年以上前、スイス在住のときのものです。
スイスの公用語は4つ。ドイツ語、フランス語、イタリア語、そして少数ではありますが古代ラテン語から引き継いでいるレトロマンシュ語。そのひとつのスイスイタリア語は、本国とはほんのちょっと違っておっとりとした方言です。
チューリッヒには本国からの移民であるイタリア系のひとたちが多く、わたしが初めて住んだアパートの下の階にもイタリア人の家族がいました。
毎年夏になると、イタリアに家族全員で里帰りし、車をおみやげでパンパンにして戻って来ます。ワインもごっそりと持って帰ってきますが、それは瓶詰めではありません。日本でもよくみる石油用の大きな赤いプラスティック容器です。それを、スイスで瓶詰めにして自分たちのセラーに保存するのです。
わたしも何本かもらったことがありますが、半信半疑だったのにあまりの美味しさにビックリしてしまいました。
でもイタリア料理がわたしの生活に深く入ってきたのは、日本が大好きなイタリア系スイス人の友人がいたからでもあります。彼のお母さんが、頻繁にわたしを招待してくれたのです。スパゲッティーの茹で方も、トマトソースの作り方も、彼女から教わりました。懐かしいな。
わたしの母も、彼が日本に来たときに泊まらせて世話をしていましたからね。英語もドイツ語もできない母と日本語が全くわからない彼がどうやってコミュニケーションをとっていたのか今でも不思議です。
さて、今日作ったのは、Polo alla Cacciatora、鶏肉のトマト煮込みです。Cacciatoraというのは「狩人風」、つまり秋の終わりに作る料理です。これも彼女から教えてもらって、あまりの手軽さに季節を無視して作るわたしの定番になってしまいました。
「骨つき肉は食べるのがめんどくさくって」というひとたちが多いですが、煮込みにすると骨がするっと肉から離れてしまうのに気づいて、結局舌鼓をうちますよ。
深めのフライパンでも手軽にできますが、パースではル・クルーゼの重い鍋で全部やってしまいます。こういう鍋はひとつあると和風煮込みも洋風煮込みもできて便利なのです。
今回は骨付きの鶏もも肉を使いましたが、ひとを呼ぶときにはまるごと鶏1羽買ってブツ切りにします。煮込みには、1羽買わずとも必ず骨付きを使ったほうがいいんです。味が全然違いますよ。
そして、この煮込みにはにんじんと玉ねぎとセロリが入っています。イタリア料理で「野菜ミックス」と言ったらこの3つの野菜のこと。ソフリット(soffritto)と言います。
レシピは印刷もできます。クリックすると印刷用のページが出ます。
材料
- オリーブオイル 大さじ3
- 皮付き鶏ドラムスティック(下モモ肉)6本
- 皮付き鶏モモ肉 6枚
- 玉ねぎ(大)1個
- セロリ 2本
- ニンジン 2本
- ベーコン 150g
- にんにく 3かけ
- マッシュルーム 150g
- 辛口白ワイン 100ml
- 缶トマト 800g
- 砂糖 小さじ半分
- バルサミコ酢 大さじ1
- ローズマリー(生)大さじ1
- ベイリーフ 1枚
- チキンコンソメスープ 150ml
- 黒オリーブ (カラマータオリーブ)1カップ
- イタリアンパセリ 適宜
作り方
- フライパンにオリーブオイルを熱して中火にします。そこに鶏肉を入れて両面にこんがりと焼き目をつけます。
- 同じフライパンの鶏の油を捨て、サイコロに切った玉ねぎ、セロリ、ニンジンと適当に小さく切ったベーコンを入れて、弱火で5分ほど炒めます。
- 玉ねぎがしんなりしたら、ニンニクとマッシュルームを入れてさらに炒めます。
- 鶏肉をフライパンに戻し、ワインを加え、3分ほど煮ます。
- 缶トマトはあらかじめ切ってないトマトだったら、ひとつひとつ取り出して荒くサイコロ状に切ります。
- 缶トマトを汁ごと加え、砂糖、バルサミコ酢、ローズマリー、ベイリーフを入れて混ぜ、最後にチキンコンソメを加えます。
- 煮立たせてからフタをして20分ぐらい弱火でコトコトと煮ます。たまにフタを開けて見てやってください。かき回してあげてください。
- オリーブを加えて、さらに10分ほど煮ます。
- 鶏肉を皿に置いてアルミホイルで覆っておきます。
- 残りの煮汁を今度は強火で煮立たせます。5−6分煮たら煮汁がとろりと少なくなりますから、それを鶏肉の上からかけてパセリのみじん切りを散らします。