クレープを追う青い瞳

垂涎の日々
Image by RitaE from Pixabay
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フランスに行くまで全く知らなかった食べ物のひとつに、クレープがあります。
初めて本で読んだときにどうも実体がつかめず、「よしフランスで絶対試してやるぞっ」と鼻息も荒く決心していました。しかし、最初の2ヶ月ほどは寮の食事になじめずに痩せこけ、とてもクレープどころの話ではありません。

そしてやっと生活にも慣れたころ、友達の部屋に夜のおしゃべりに招かれたました。さして広くもない二人部屋に8人ほどが床に座ったり、ベッドに寝そべったり、立ったまま壁にもたれたり、皆思い思いの格好でくつろぎ、その当時ほとんどのひとが煙草を吸いましたから、部屋にはもううっすらと霞がかかっていました。

安いワインは紙コップで手渡されましたが、「ちょっとお腹もすいたね」の言葉で、すいっと出てきたのがキャンピング用簡易ガスコンロ、ボコボコにへこんだフライパン、窓の外からはバター、そして大きなビニール袋にはいったうすく柔らかいお焼きのようなもの。

それが、フランスのスーパーならどこにでも売っている「即席クレープ」でした。すでに焼き目もついているこの薄いクレープを一枚はがし、バターを落としたフライパンで軽く焼き、いよっとばかりにフライパンを器用に動かして宙に放り上げ、またフライパンで受け止めるのです。

これが一番上手なのが、黒髪に青い瞳のベルトランでした。

両面にバターがしみわたるころ、ここにラムを惜しみなくたらし、炎を少しいれてアルコールを飛ばします。そしてパタンパタンと4つ折にして出来上がり。各人好みで砂糖をかけていましたが、わたしはそのままのラムとバターの香りが大好きでした。

そして、ベルトランの透き通るように青い瞳が、宙のクレープを追ってまっすぐに上に向けられるのを見るのも、大好きでした。

彼の美しい瞳が魔法の味付けをほどこしていたせいか、その後パリの街で初めてホンモノのクレープを食べましたが、それほど美味しいとは感じられませんでした。

 

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