イタリア惣菜店の看板娘「たち」にとまどう

コーヒー豆 垂涎の日々
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もう5年ほど前のこと。
土曜日になって、珈琲を切らしていたことに気づきました。わたしのお気に入りのイタリア食品店は土曜日はお休みなのです。

 

真空パックの珈琲ならスーパーで手に入ると思って車を走らせていたら、ちょうど並びの小さな総菜屋のことを思い出しました。総菜屋というより珈琲ショップのような洒落た作りで、店の中のウィンドウにはハムやチーズが並び、イタリア風に各種オリーブ、ナスやズッキーニのマリネなども買えます。軽いサンドイッチと珈琲は、店の中のテーブル席でとれるようにもなっています。

 

従業員は店のオーナーらしき大柄で声の大きな男性と、女性が三人ほど。皆揃いの黒いTシャツを身につけています。その中のこちらを向いた女性に、量り売りの珈琲豆を注文しました。長い黒髪をきっちりと後ろでポニーテイルにして、とても大きな目をしたイタリア系の若い美女です。

 

注文した珈琲豆を挽いてもらっている間、何とはなしにウィンドウのハムを眺めていたら横から声をかけられました。珈琲豆をひいてもらっている彼女です。
「何かお探しですか?」
とまどって黙っていたら、今度は「誰かもうご注文を受けておりますか?」と、さらに聞かれました。なんだか妙です。
「えーと、アナタに確か珈琲豆を注文したはずなんだけれど」と言うと、彼女は大きな白い歯を見せて笑い出しました。
「わたしたち、双子なんですよ」

 

そう言う彼女の脇から、珈琲の袋をかかえた同じ顔がもうひとつ現れました。
似ている双子は沢山いますが、これほどそっくりな顔はあまり見かけません。ましてや、同じTシャツのユニフォームにポニーテールです。

 

「よく間違えられるんですよ。わたしたちどちらも長い髪が好きなもんで…ヘアスタイルを変えたら一番わかりやすいんですけれど」
そう言って笑う双子No.1から挽きたてのよい香りを放つ珈琲を渡され、微笑む双子No. 2にドアを開けてもらって、わたしはその店を後にしました。

 

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